第24話 僕の友達アンディ達

今回はちっとも不思議な話でも何でも無いです。
沖縄に居る頃の話です。
(例の、もう1人の僕があちこちで出現していた沖縄です)

ある夜、僕は歩道で夕涼みをしていました。
道路の向かい側にはハンバーガースタンドがあり、そこは僕もよく行っていました。
窓口ではジーンズ姿の3人の白人がハンバーガーを注文していて、その店に面した歩道を結構長身の黒人が歩いているのが見えます。
そこへわりと小柄な(多分160cm位)女性が反対側から歩いて来ました。
特にいつもと変わりない風景です。

すれ違いざまに黒人の兵士が白人の女の子に声をかけたようでした。
女の子が、視線も動かさず足も止めずに何か答えます。
それに対して、黒人が何か言い返しました。
突然、振り向いた黒人が足早に女の子の方へ駆け寄っています。
多分、みだらな言葉をかけられた女の子がその黒人にN言葉を返したのでしょう・・・
すれ違ってから二人の間には既に数メートルの距離が離れていたのですが、女の子の後ろを小走りで追いかけたその黒人は、振り向いて身構えている女性を一気に殴り飛ばしてしまったのです。

180cmを超えるだろう黒人の兵士が160cm位の小柄な女性の振り向きざまを思いきり殴り上げたので、1メートルほど飛ばされたその子は背中から地面に落ちて身動きもしません。

それを見ていたハンバーガーを待っていた3人の男が、
口々に「お前、女を殴ったな!」「なんてぇ事をしたんだ!」というような事を言いながら、その黒人に飛びかかりました。
相手が3人で勝ち目が無いと思った黒人兵士は地面に倒れこみ防戦をしますが、既に靴は片方脱げて上着がはだけ、髪を振り乱して、車道に転がってバタバタと手足を振り回している状態です。
やっと立ち上がった彼は必死の思いで車道を横切り、僕の居る側の歩道を目指して走って来ます。

そのまま僕の横を通りぬけて、やっとの思いでそこにあったディスコのドアを開けて逃げ込みました。
追いかけてきた3人の白人兵士のうちの1人が彼が逃げ込んだディスコに入ろうとします。
「ヨゥ・・・」と僕はその白人に声をかけ、
「あんた赴任したばかり?そのクラブの中には黒人が200人くらい居るぜ・・・」 僕が彼にそう言うと、
「おう、大丈夫だよ・・・ちゃんとやつの顔は覚えてるから見分けはつくさ・・・」
『いやぁ、そういう問題じゃぁなくって・・・・』と呆れながら
「そうじゃなくってさぁ・・・・」と、それ以上なんと説明をしたら良いのか口篭もっていると、
「ところでお前、なんだよ?奴の友達?」と、怪訝そうに僕に顔を向けます。
なんだか僕にまでとばっちりを食いそうなので
「俺は別に関係無いんだけどさ・・・ただ、一言忠告して上げようと思って・・・」とだけ言い、彼がその黒人ディスコへ入っていくのを見送りました。

『あいつ、中で袋叩きになってドアから放り出されるんだろうなぁ・・・・』と思いながら、 ドアが開くのを待っていました。
ところがドアが開いて見えた光景は予想とは大きく違っていたんです。
なんと彼がさっきの黒人の襟首を片手でつかみ引きずり出して来ます。
『そんな馬鹿な・・・』と思って見ていると、その後ろから100人位の黒人達がぞろぞろと遠巻きに出てくるのです。

さっきの彼は黒人を店から引きずり出すと、かがみこんで一方的に殴りつけています。
そこへ、気の荒い海兵隊の軍曹が店から飛び出してきました。
彼の事は僕も良く知っています。
海兵隊でボクシングのインストラクターをやっていて、気の良い奴なんですがちょっと短気で、特に同朋(黒人)がライバル(白人)に攻撃されていると理由がどうであっても我慢が出来ない性格の奴です。

「ちょっと待てよJames・・・俺、最初から見てたんだけど、こりゃお前のBrother(黒人)が悪いぜ・・・」と言うと
「理由なんかどうでも良いんだよ、Brotherが白人に殴られてるのに、どうして誰も助けないんだ?!」と言いながら怒った顔で回りの黒人たちを見渡します


うつむいて殴りつけている白人兵士の所へかけよった彼は、無防備な彼の顔めがけてまるでサッカーボールをシュートするみたいに下から思いきり蹴り上げました。

僕を含めた観客(?)は皆が「あ〜ぁ・・・・・」と思って一瞬息をのんだのですが、 不意に顔を蹴り上げられたその白人兵士は、ひょいと顔を上げると、きょとんとした顔をして
「おめぇ、なんだよ?関係ねぇだろ!」と言って、また歩道の黒人を殴り始めるのです。

彼の顔面を思いきり蹴り上げた僕の友人の軍曹も、周りで見ていた僕らも全く唖然として声も出ません。
そこへ、海兵隊のMPや空軍のSPのパトカーが集まって来たので全員が散って行きました。
逃げる必要も無い僕もなぜかみんなと一緒に走っていたのですが、横を走ってる若い黒人の兵士に、
「どうしてみんな最初からあいつに手を出さなかったんだよ?」と尋ねると
「だって、あいつSea Beeだぜ・・・」と一言だけ言うと僕とは反対側の路地裏に走り抜けて行きました。

ある夜、空軍でPoliceをやってる友人にライブハウスで会ったので、
「なぁ、Sea Beeってどんな奴ら?」と聞くと
「そこのカウンターで1人で飲んでる奴、あいつSea Beeだぜ・・・直接聞いてみな」と言うので、 カウンターへ行き
「ねぇ、あんたSea Beeなんだって?一杯おごらせてくれよ・・」と言うと、彼はけげんな顔をして
「俺、お前の事知らねぇよ・・・なんでおごってくれるんだよ?」と聞くので、数日前の騒ぎを説明すると
「あぁ、あれはウチのMartinだよ・・・」と笑って答えるのです。

それから、僕は彼らの部隊と随分仲良くなりました。
一緒に飲みに行ったり、食べに行ったり、ライブで騒いだり・・・。

ある日、喫茶店でみんながカウンターに一列に並んでお昼ご飯を食べていました。
その部隊の軍曹のMartinが
「なぁ、Jun、Andyは頭のネジが外れてるんだぜ・・・」と笑って言うのです。
Martin自身が、あの黒人で満員のディスコに平気な顔で入りこんで引きずり出してきた奴ですから、そうとう頭のネジが外れています。
そのMartinが「頭のネジが外れてる」って言う奴って、どんな意味だろう?と思っていると、
「ようAndy、あのニカラグアの話をしてやれよ・・・」とみんなが笑いながら言うのです。
Andyってのは、陽気でいつもにこやかな、ちょっと(かなり?)ハンサムな男です。

「市外戦でさ・・・敵は撤退したはずなのに、海兵隊が上陸しようとするとスナイパーがパラパラと撃って来るんだよね・・・」
「それで、他の部隊が安全に上陸出来る為に俺達がそのスナイパーを見つけて安全を確保するのが任務だったんだ」 軍曹が途中で口を挟みました。
「ジープとトラックでそのビル群まで近づいたんだけど、車を降りて少しでも歩き出すとやっぱりパラッパラッと撃って来るので危なくて近づけなくてね・・・」
「俺がどうしようか考えてたら、こいつが『なぁ軍曹、俺に任せてくれよ』って言うんだ」
「お前、どうやって見つけるんだよ?」って聞いたら、
「まぁ、良いからみんな後ろに待機していてくれ」って言うと、 いきなりジープのボンネットの上に飛び乗って、 中指突き立てて
「Fuck You!!Mother Fuckeres!!」って大声で叫びやがる。

軍曹がそこまで言うと、カウンターで一列に並んでた他の連中が大爆笑。

「その途端に、ビルのあちこちから、一斉射撃で、土ぼこりやら破片やらで、まわりは何も見えない状態」
「みんな命からがらジープの陰とかトラックの下に飛びこんで、俺もジープの陰に身を隠しながら、何とか手を延ばして地図と無線機を手元に寄せて、後方の艦に(Sea BeeはNavyの建設部隊です)『地図のXXXXの地区を後方射撃してくれ!』って後方支援を依頼したんだけど、まぁ、その最中は生きた心地はしなかったね・・・」

「それで、後方から艦砲射撃が飛んで来て、後はヒューン、ドン、ドン、ドン・・・で静かなもんさ」
「静まった後に、それぞれ銃を構えて『安全確認』と口々に言いながら確認業務をしていたんだけど、心の中じゃみんなAndyの遺体を捜していたのさ・・・

『あいつは、良い奴だったよなぁ・・・でも、最後まで無茶な奴だったよ・・・』って思いながら・・」

「そうしたら、いきなりジープの下からAndyが出てきて『なぁ?ちゃんと見つかったろぅ?・・・』って、ズボンの埃を払いながら笑ってるんだ」

そこでまた全員大爆笑・・・。
そして、誰かがグラスを持ち上げて、
「For Crazy Andy!」と言うと、 Andyがグラスを上げて
「For Sea Bee!」と言い、それに応えてみんながグラスを上げて、
「United States Navy!」と全員で乾杯。

映画の様ですが、これも今までの霊体験と同じく実話です。
最近、Saving Private Raynを見ました。数年前にチャーリー・シーン主演のNavy SEALを見ました。
そのたびに、実在するMartinやAndy達の事を思い出してしまいます。

戦争に対する是非とか、沖縄の基地問題とか、つい最近はアメリカの対テロ報復(98年8月)事件も起きました(多分、SEALチームがかなり動いた事でしょうね) 日本の武士だけではなく、カミカゼだけではなく、ノルマンディ上陸作戦のだけではなく、 対テロ特殊部隊だけではなく、 肉体を越えた精神って、スポーツ選手やレーサーなんかにも時々見うけられ、 それって人間の感覚のどこかに存在するんだなと感じてます。

僕は高校の頃にラグビーをしてましたが
「地面に転がるボールは、自分の体を盾にして自分の背中を蹴らせてボールを守れ」と言われながらの練習が好きでした。

単なるスポーツですが
「自分の肉体よりも大切にしなければいけないものがある」 って、気持ちの良い感覚ですよね。

今回は、内容が沖縄であり、米兵であり、戦争であり、なかなか社会情勢の問題で僕の意図する事が上手く伝わらないかなぁとも思っていますが、いずれにしても僕の意図はどうせ上手く伝わらないですよね(苦笑)
僕自身が良く解っていないのですから・・・・。

ある意味で、こんな奴らが「お話の世界じゃなくって実際に居る」って事は普通の人達にとって、 霊現象と同じ位「不思議な(信じがたい)話」かも知れませんよね。

とうとう、24話までお付き合い頂いてありがとうございます。
もう少し続けさせてくださいね。

 

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