第28話 スキー場にて
僕は今までにも書いた様に、自分の目で霊を見た事が有りません。
この時もそうだったのですが、まだ19才か20才の頃でした。
友人を横に乗せて夜中に冬のスキー場へドライブへ行きました。
なぜ夜中に、スキー場かって、他に車も人も居なくてワインディングの道で、突っ込んでも道路の両脇には雪のクッションがあって練習するには丁度良い場所だったのです。
北海道の雪道(特に峠道)は除雪車が除雪した雪がどんどん道の両脇に盛り上げられ、その上にまた雪が積もったり、巨大な脱穀機のような排雪車がその上にまた雪を積み上げ、道路の両側には2〜3mもの高さの雪の土手が出来あがり、さながらボブスレーのコースのようになるわけです。
さて、ドリフトしたり逆ハンを切ったりしながら、雪道を掛け上がっていました。
まだふもとの辺りで突然犬が出てきて、ドキッとしたら今度は飼い主が雪道で滑りながらよろよろと出てきました。
まぁ、夜中に雪道走行の練習に来る若者も居れば、犬の散歩をする人が居てもおかしくは有りません(苦笑)
しばらく上がって、人影も他の車のライトも何も無くなった頃、
友人が無言で右の雪の壁(土手)を見ているのを感じました。
左に乗っている友人が、右の雪の土手をじーっと目で追っているので、丁度視線が僕の顔の前を通って行くので、何かを目で追っているのは感じます。
「洋一、どうした?」
「何か居るのか?」
夜の雪道でハイスピードで走っているので、突然何かに飛び出されると避け切れないので、僕はさっきの犬のように何かが飛び出てきてびっくりする事だけが心配で声をかけてみましたが、何も返事はありません。
とりあえず、横に滑ったり立てなおしたり、雪煙を上げて峠道を上る事だけに僕は全神経を使っていましたから、まずは上り切る事に専念していました。
峠の頂上に付いたのはもう真夜中をとっくに過ぎていました。
とっくに営業を終了したレストランや貸しスキー屋さんが並ぶ真ん中に大きな駐車場があり、勿論車は一台も止まっていません。
駐車場に車を止めると、横でさっきから無言だった友人が
「さっきな・・・・人が雪の土手の上に立ってた・・・」と言い出しました。
「あの、犬を連れたおっさんじゃなくてか?」
「うん・・・・さっき、純が『何か居るのか?』って聞いた所・・・・」
「電信柱とか標識とかじゃなかったのか?」
「うん、俺もそう思ってじっと見ていたら、雪の土手の上に立ってた人影が、後ろ向きになってこっちを背中にして雪の土手を降り始めたんだ・・・・」
「じゃ、黙って突っ立ってる影じゃなくて、ちゃんと動いていたんだ・・・・」
「うん、丁度俺達が通り過ぎる時に、雪の壁を後ろ向きになって降りてきてた・・・」
「どこまで見てたんだよ・・・」
「なんだか変な気がしたんで、横を通り過ぎるまでずっと目を離さずに見てた・・・・・」
「じゃぁ、すぐ横を通り過ぎた時もちゃんと見えていたんか?」
「うん・・・・・・」
「それって、つまり俺の窓のすぐ横に人が居るところを走って来たって事だろ?いくら雪道を真剣に運転していても道路の脇に人が立ってたら俺だって気が
付くはずだぜ・・・・」
「うん・・・・・。なんだか、俺にも純には見えていないような気がしたんだ・・・・」
「おいおい・・・・じゃ、やっぱり幽霊かよ・・・・・・・・・・(汗)」
実はその道は頂上のレストランやリフト乗り場のあるその駐車場で行き止まりで、その先はスキー場でどこにも行けない。
ふもとへ戻るにはまたさっきの同じ道を戻るしか無い。
このまま日が昇って明るくなるのを待つか、慎重に今の道を戻るしか無い。
2人きりで真っ暗な駐車場に居るのも怖いし、どう考えても戻るしか手は無い。
「もしかしたら、やっぱり標識の影で俺のヘッドライトの加減で動いてるように見えたのかも知れないし、戻ってみようぜ・・・・・」
と、僕が言うと相棒は
「こんな所で事故って雪山に突っ込んで朝まで2人で車に閉じ込められるなんて嫌だから、安全運転で降りてくれよぉ・・・・」と、泣き出しそうな声で哀願した。
車を斜めに走らせながら上ってきた時の勢いとは裏腹に、本当に安全運転でゆっくりゆっくり雪道を踏みしめながら峠を降りて行った。
例のカーブに近づいて、相棒が興奮しながら
「おい純! 次のカーブだよ・・・・ゆっくりな、ゆっくり・・・・・」
と言い出した。
「洋一、標識とか電信柱とか探せよ・・・・俺は道路見てるからな・・・・」
「有った、有ったぁ!標識がある。カーブの根元のところに・・・・・・・」
「でも、さっき見えた人影とはちょっと違うけどなぁ・・・・」
「何か書いてある・・・・・・・・えーと・・・・・・・・・・」
「4名即死死亡事故現場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その後、ふもとまでどうやって運転してきたかは記憶に無いけれど2人とも無言だった事だけは覚えている。
後日別な友人に聞いた話では、その事故現場は若い男の子2人がスキー場で女の子2人をナンパして、自分の技術以上の猛スピードで雪道を下ってくる途中で車が横転。
横転したまま雪道を滑り、立ち木(電信柱だったかも知れない)に窓から上の部分が衝突し、車体の窓から上の部分(窓と屋根部分)と下(ボディ部分)が2つに分かれ、乗っていた4人は4人とも首から上が切れて即死という事故だったらしい。
僕の友人が見たのはその内の1人だったのか?、なぜ1人だけだったのか?、なぜ雪の土手の上に立っていたのか?、なぜそこから土手を降りて来はじめたのか?、それらは全く不明だし、僕は特に知りたいとも思わない。
僕が知りたいのは、運転席側の道路脇の土手から降りて来て僕の側の窓から2mも離れていない所に立っていた人(霊)が、なぜ僕だけに見えなかったのか?
普通、横に乗っている人よりも運転している人の方が回りには気を配っているのに(特に動くもの)、なぜ運転していた僕には見えずに、横でボーっとして乗っていた友人に見えたのか?
つまり、「僕には霊は見えない」って事なのだろうか?
だったら、なぜなんだろう?
僕が知りたいのはその事だけなんです。て続けにいろんな種類のET(…と思われる)が来て、いろんな事をしていく事になります。
