第31話 夏休みの海

基本的に、このお話集は自分で体験した事だけを書くつもりです(他人が体験した事を他人が直接書いているページもありますが)
でも、僕が霊を見なかった始まりはこの時から始まっているような気がするので、他人から聞いた話をひとつだけ・・・・

高校の1年生の時だったと思う。
当時仲の良かった何人かで夏休みにキャンプに行こうという計画を立てた。

メンバーは僕を入れて5人。
ところが、確かアルバイトの都合か、クラブの夏練習か、(デートの都合では無かったはず)何かの理由でどうしても僕は行けなくなってしまった。
とても残念だったのだけれど、帰ってきた友人4人から聞いた話は・・・・・・・。

最初、彼らがテントを張った場所は、家族連れも多く結構ガヤガヤとしていたらしい。
近くに海の家もあるのだけれど、まったく営業している様子は無いし、夕方になると昼間にぎやかだった家族連れもみんな帰り、その辺に残っているのは彼らだけになったそうだ。

夜になって一応、固形燃料か何かで料理をして夕食を取り、それぞれテントに入り寝袋に包まって眠りについたらしい。
何時頃だったのか、(聞いたけれど僕はもう覚えていない)テントの外で何やら足音が聞こえ始めたらしい。
回りには誰も残っていなかったはずの人里離れた海岸で、車がやってきた音も聞こえなかったのに足音がするのはとても不気味なので、それぞれがそれぞれを起こして、
「おい、誰か見てこいよぉ・・・」
「俺はいやだぜ・・・・」
と、テントの中で小声で言い合っているうちに、突然外でガラガラガランと、夕食の時に調理して出しっぱなしだった調理用品を蹴っ飛ばしたような音が聞こえた。

内心で皆、『幽霊じゃないか?』と怖がっていたのだけれど、幽霊が蹴っ飛ばしたにしてはやけに現実的な音を聞いてテントの中で小さくなっていた彼らは突然
「コノヤロー! 何してる!?」と手に手に懐中電灯を持って応戦体制でテントから飛び出したとの事。

ところが、外には誰も居ない。
たった今、鍋やフライパンを蹴っ飛ばしたはずなのに、見渡す限り隠れる所も無く海岸の砂浜だけ・・・・・・・。

翌朝、明るくなってから良く見るとビニールのごみ袋に詰めてあった調理ゴミが、まるで中を調べたかのように袋から全部丁寧に出してあるのに仲間の1人が気がついた。
「やっぱり、昨日の夜はカラスか野犬だろう・・・・・」
と、全員ほっとして後片付けを始めた所へ、海の監視人(?)がやってきて
「おい、君らは昨日ここでキャンプしたのか?」
と、聞くので
「ここでキャンプしちゃいけなかったんですか?」と聞き返すと

「いや、そんな事は無いけどね・・・・・・」
「ゆうべ、何か変わった事無かった?」
と、真顔で聞くのだそうだ。

「昨日の夜中に、多分野犬かカラスが・・・・・」
と、昨夜の件を話すと、この人が
「そうだろうねぇ・・・・・・」
「一昨年ね・・・・・ちょうど、君らがテントを張ったそこに水死体が上がってね・・・・・」
「そこの海の家あるだろ?ここの海は町から通って来るには不便だからあの店の経営者は夏の間は店に住み込んでいたんだけどね・・・・・」
「夜中に『すみませーん・・・』と誰かが玄関のドアを叩くので行ってみると誰も居なくて、玄関前のスノコの上には塗れたはだしの足跡がついてるって夜が続いてね・・・・・」
「ただそれだけの事なんだけど、あんまり続くので今年は営業を止めてしまったんだよ・・・・」

「そこに僕らがテントを張った訳ですか?・・・・・・・・・」
「そうだよ」
「まぁ、野良犬とかカラスとかじゃないとは言い切れないけど、今年は夜になると誰も居なくて寂しかったんじゃないかなぁ」

彼らが夜中にテントから飛び出した時には「塗れた裸足の足跡」は無かったらしいけれど、逆に犬の足跡もカラスの足跡も何も無く、野良犬にしてはやけに逃げ足が速く、鍋を蹴っ飛ばした犯人は既に影も形も無かったらしい・・・・・。

これ自体不思議な話何だけど、僕にとっては身近で起きた霊の話はこの時が最初で、「本当だったら俺も行っていたのに・・・・」と感じて、それ以降何度と無く身の回りで遭遇する霊現象を僕はまだ一度も自分の目で見たことが無い。

「自分の目で見た事が無い」というのは、「体験した事が無い」という意味じゃない。
同じ部屋に居て(同じ車に乗っていて)、僕にだけ見えない。
あるいは、たまたま僕だけ窓やドアを背にしていて僕だけが見えない角度に座っていた。
隣に腰掛けていた奴が肩を叩かれたのに、僕には何も見えなかったし触れなかった。
霊といっしょにしばらく暮らしていて、僕には何も見えず触れず聞こえない。

こんな事の連続で、実際には身の回りで起きている霊現象や超常現象や理屈のわからない体験は他の人よりも多分ずいぶん多いと思う。
なのに、霊自体は一度も見えた事も触れられた事も無い。

それ自体がとても不思議なのです。

知らずに霊を呼んでしまう事は良く有るけど、自分自身では見れない人って居るんですかねぇ?
「実は自分もそうなんですよ」と思い当たる方は是非ともお便りを頂きたいです。
もちろん、「どうも自分は別な自分の生活しているらしいパラレルなもうひとつの世界に迷い込んだ事があるらしい」と思う方や
「UFOにさらわれて記憶を消されたらしいんです」と思う方もどなたでも歓迎です。

きっとひとつの答えで簡単に解決の着くような事ではなく、いろんな事が複雑に絡み合っているのでしょうけれど少なくともいろいろな情報を知るだけでなんとなく落ち着く事って有るじゃないですか。

 

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