第33話 約束を守ってやれなかった友人の弟

18才か19才の頃だった。
僕はその時、高校時代から溜まり場にしていた学校の近くの地下の喫茶店に居ました。
やはり高校時代からそこを溜まり場にしていた他の友人たちも常連客で、その日もやっぱりでかい顔をしながら漫画を読んでたんです。

突然、停電になりました。
客は常連の僕らと、あと数人。
地下の喫茶店で停電になると何も見えなくなります。

その喫茶店のママが、懐中電灯をカウンターの上に出して「誰かお願い・・・」と言いました。
僕がドアを開けて廊下のブレーカー・サーキットを照らしてみます。
すぐに電気は戻りました。
「ありがとう」と言うママに、懐中電灯を返しながら、僕は
「どこもいじってないんだよね・・・・・ブレーカーは落ちてなかったよ」
と、言ってまた席に着きました。

ほんの数分の停電が終わった直後に電話が鳴って、受話器を取った喫茶店のママは何も言わずにすぐ切りました。
後で聞くと無言電話だったらしい・・・・

カズトだったか、ヨシカズだったかもう名前も記憶から薄れ掛けている。
病気だったのか事故だったのか自殺だったのかすらも今は思い出せない。
でも、彼にとって僕はなぜかヒーローだったらしい。
なぜ、なんのヒーローなのかわからないけど、彼は僕の事を兄貴の友達として以上に、とても慕ってくれていた。

彼が死ぬ数日前に、
「弟がさ、『純さん元気なのかなぁ?純さんに会ったら、今度ドライブに連れて行ってやるって約束忘れないでねって伝えてね』って言ってたんだけど・・・」
と彼の兄貴(僕の友人)が言いました。
その時は「いつでも良いぜ、明日か明後日にでも電話しろよ」って伝えてもらったんです。

2〜3日して、友人から喫茶店に電話が来ました。
弟が死んだ事をまだ知らずに
「お前の弟からまだ電話来ないぜ・・・」と言った後に
「あいつさぁ・・・・死んだんだよ・・・・」
と、言われたんです。
「あちゃ・・・・約束守ってやってないじゃん・・・」
そう思いました。

病気だった訳ではないし、確か車やオートバイの免許も持ってなかったはずだと思う。
自殺だったかも知れない。

かなり記憶は薄れているけど、彼が死んだちょうど同じ時間に停電になったのはただの偶然ではなかったと感じています。
きっと無言電話も彼だったかも知れない。
「あれはきっと彼が俺に挨拶に来たんだ」と、今でも思っています。

ドライブにつれていってやるって約束を守れなかったのは僕のせいじゃない。
でも、彼が死んだと聞いた時に、
「あぁ、電話して俺の方から誘ってやれば良かった・・・・」
そう感じた悔しさはずっと忘れられません。

 

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