第42話 何か言いたくてついて来たらしい霊
沖縄にいた頃に友人のアパートに遊びに行った時のこと。
クラブ(ディスコ)でバーテンをしてるその友人が、
「前にさぁ・・・、店のマスターが酔っ払って夜中に遊びに来てね・・・・」
「かなり酔っ払ってうつろな目で俺に『おい、さっきからあそこに座ってるオヤジは誰だぁ?』って、言うんだよね・・・(汗)」
と、部屋の角を指差してそう言うんです。
しばらくそんな話をしていると、どうも部屋の中がなんだか異様にざわついてる感じがしてきました。
2人しか居ないアパートの中で"なんだかざわついてる感じ"というのはどう伝えたら良いのかわからないけど、
きっと判る人にはこの感覚はわかってもらえると思う・・・・
僕が
「なんかさぁ・・・さっきからちょっと部屋の中に人がいっぱい居るような気がして落ち着かないんだよなぁ・・・」と言うと
怖がりの彼は
「ねぇ、夕飯でも食べにどこか行こうよ・・・・」とビクビクしながら立ち上がりました。
でも僕はなんだかとても後ろ髪を引かれる思いで、ちょっとすっきりしないんです。
彼はもうドアを開けて半分体を外へ出しながら、
「Jun、早く、早く・・・・もう外に出ようぜ!」
と一刻でも早くここから離れたい様子
でも、僕はそれがなんだかわからないけどなんだかすごく心残りで、
そのまましばらくその部屋に残って居たい気分というか、そうしなくちゃいけないような気すらするんです。
でも、彼があまりにも催促するので仕方なく部屋から出て、飲食店街へ2人で歩いて行きました。
なんと、明るい飲食店街へたどり着くまでは街灯すらない暗い道なんです。
2人で無言でその暗い道を歩いていると、なんだか誰かいっしょに歩いてる気がして仕方ありません。
怖がりの彼には何も言わずに、肩の後ろに人の気配を感じながら暗い夜道を歩いていました。
ちょっと明るい大通りに出て、歩道にはすれ違う歩行者もぱらぱらと現れ始めたけど、
でもやっぱりまだその「気配」は消えません。
飲食店に入って、2人でテーブルに座って、やっとその「気配」が居なくなりました。
気配が無くなったところで怖がりの彼に
「実はさぁ・・・さっきからずっと・・・」と話し始めたら、
彼もアパートを出てからずっと人の気配を感じながら歩いてきたらしいんです。
そして、同じようにこの飲食店に入るとその気配は無くなったと言い出しました。
僕には、彼のアパートにたまたまたくさん集まってしまった霊の内のひとりが、
何かどうしても訴えたい事があって、それで僕もあのままあのアパートに残りたかったんだろうと思えて仕方なかったんです。
その時の僕の感じたのは「もう少しここに残りたい」じゃなくて、
どっちかと言うと「もう少しここに居てあげたい」という感覚だったから・・・・
悪意は感じませんでした。
なんだか、何か頼み事や言いたい事がある生身の人間が言い出すきっかけを逃してしまって、
そのまま無言で僕のそばを歩いているような感じです・・・・
「おい、何か言いたい事があるなら早く言えよ・・・・」
今度はちゃんとそう話し掛けてみようと思いました。
今でも、「あの霊は何が言いたかったのだろう・・・・?」時々そう思い出します。
