第44話 雪が融ける
沖縄で1年過ごして、実家の厚木に戻りました。
東京のアパートは沖縄にいる間に引き払って、友人たちに荷物を厚木の実家まで運んでおいてもらっていたんです。
だから、沖縄を後にした僕が戻れる所は厚木しか無かった。
ただ、厚木市とは言っても山の中で、峠の途中のような実家の廻りには家1軒建っていない。
僕の両親は札幌に家があったのだけど、建設業の父が丹沢にダムだったか道路を作るのに厚木に来ていて
仕事用の作業員宿舎や事務所の横に小さな平屋の家を建ててそこに住んでいました。
体を壊して(末期ガン)寝込んでいた父は仕事が出来る状態ではなかったので、
銭湯のような大きな風呂がある作業員宿舎も事務所も、なんだか廃墟のようにすっかりガランとしていました。
その小さな家の脇に3畳か4畳位の物置のような離れが有って、その小さな離れの中にはちゃんとベッドや机があったんです。
すっかり僕はその離れに住みつきました(まぁ、親の家の離れですから、住み着いたというのも変ですが・・・)
沖縄から帰ったばかりで特にすることも無く、職も決めていなかった僕は毎晩その小さな離れで友人たちに手紙を書き続けていました。
お袋が寝る前に、僕にポットにいっぱいの紅茶を手渡してくれて、僕はそのポットにいっぱいの紅茶が無くなるまで小さな離れであちこちの友達に手紙を書き続けていたんです。
ある夜、沖縄で知り合った友人が広島から電話をかけてきました。
かなり長い事話していたと思う。
ふと外を見ると雪がシンシンと降り始めていました。
数時間も話していただろうか、また外を見たらもうすっかり外は真っ白に雪景色。
狭い部屋でストーブを点けタバコを吸い続けていたので電話の後に外へ出てみたんです。
もう明け方の3時か4時頃だったと思う。

外へ出て驚いたのは、山の木々も地面もすっかり真っ白に雪で覆われているのに、
家の前の道路だけがまるでロードヒーティングをかけたかのように、きれいに融けていたんです。
しかもちょうどロードヒーティングで融けたように、アスファルトが濡れて黒く光っている・・・・
「凍って黒っぽいのかな?」と思い、路面に触れてみたけれど凍っているのではなく、地面は融けた雪で濡れていました。
しかも、きっちりと線を引いたように、融けて黒い部分と雪が積もって白い部分はしっかり区切られていたんです。
まるで誰かが夜中に家の前だけを雪かきして、線を付けたようでした。翌朝、お袋に聞いてみたけどもちろんお袋が夜中に起きて雪かきをした訳ではありませんでした。
そんな現象はその夜一度きりで、その後で雪が降った日は家の前も全部真っ白になっていたから
家の地下に何かが埋まってるとか、地下水が走ってるとかそういう訳では無かったようです。
きっと何かの熱が家の前を覆っていたのに違いないと思っています。
そう言えば、ヨガの行者が雪山で修行をしていると彼の回りだけが雪が融けるそうですね。
勿論、僕は修行をしていた訳なんかじゃなくて、ただ友達と電話で長話をしていただけだけど・・・・
