第72話 肝試し
随分と昔の話を思い出しました。
僕は喫茶店が好きで、気に入ったなじみの喫茶店には毎日のように通うクセがあるんです。
札幌に居た頃、毎日行っていた近所の喫茶店がありました。
そこの定連さんに聞いた話なんです。
50代半ばの彼は、元テキヤで今は解体業の親方をしていました。
ある時、若い衆が「おやっさん、平岡(注:地名は記憶違いかも知れません)に、幽霊屋敷があるらしいっすよ・・・行ってみませんか?」と言い出したのだそうです。
その家は新築にも関わらずおかしな事が続くので、解体業者が(家の)解体に入ったけれど途中で仕事を放棄したという情報を同業者から聞きつけたらしいのです。
「そんなモンにゃ近づかん方が良い」という彼に、若い衆が
「そんな事言って、おやっさん怖いんじゃないっすか?」と茶化すので、仕方なく一緒に行ったそうなんです。
若い衆が運転して助手席にもうひとりの若い衆、後ろに彼が乗った車がその家に近づき、途中にある川(豊平川?)にかかる橋を越えた途端に急に彼のひざが痛み出したのだそうです。
家に近づくにつれて痛みはどんどんと増し、家の前に付いた時には車から降りられないほど痛くなってしまったそうです。
「俺はひざが痛いから車に乗ってる・・・」という彼を尻目に、威勢良く若い衆二人が車を降りて家の周りをウロウロし始めました。
玄関には、しめ縄のようなものが張り巡らせてあり、お札も貼ってあったそうです。
話によると、お坊さんやら神主さんやらいろんな人がお祓いに来たそうなんですが、一向におかしな事は止まなかったそうなんです。
勿論、空家とは言え防犯の為に玄関も窓もカギがかかっていますから、どんな『おかしな事』があるのか確かめようとやってきた若い衆は家の周りをうろつくしか出来ずに、かなり気落ちしていたようです。
ただ、家の横にはバールやハンマーなんかが放りっぱなしで落ちていたそうですから、解体業者も仕事を途中で引き上げてしまったらしい事は判る状態だったそうです。
家の中には入れないと諦めた若い衆二人が、横にある車庫の前に来て
「車庫のカギはかかってないっすよ、おやっさん!」
と、車の中から心配そうに見ている彼に声をかけました。
「いい加減に止めておけよ・・・」という彼の言葉も聞かずに、若い衆二人が車庫のシャッターを開けて中に入っていきました。
「おっ、冷蔵庫がある・・・」
と、車庫の奥にある冷蔵庫の扉を開けたのですが、中は空でした。
期待した事は何も起こらずに、つまらなそうに引き返して来た二人がちょうど車庫のシャッターの辺りまで来ると、突然奥の冷蔵庫の扉がバーンと開いたのです。
勿論、車庫の中には誰も居ませんし、冷蔵庫の扉はマグネット密着式ですから簡単には開かないはずです。
驚いて振り返る二人に、彼が
「だから、余計な事はするなって言ったじゃねーか・・・ちゃんと閉めて来いよ」と車の中から声をかけて、
若い衆の一人が薄気味悪そうに冷蔵庫の扉を閉めに車庫に入って行きました。
そして帰りの車の中では、来る時にひざが痛くなり始めた橋を越えると彼のひざの痛みが嘘のように消えたそうなんです。
翌週、若い衆の一人がオートバイの交通事故で足を折ったそうです。
翌月、もう一人がパックで海外旅行に行き、現地で集合時間にやって来なくて今でも行方不明だそうです
(どこの国へ行ったのか、20年経った今でも行方不明なのかは判りませんが・・・)
興味本位の肝試しはやらない方が良いって事でしょうね。
