第80話 不思議(不可解)な話 その2
今回の話題も心霊現象や超常現象ではないんですが、怪奇現象かも知れません。
いずれにしても、僕には理解不能な不思議な話なんです。
今(2008年10月)、世界中の金融経済が大騒ぎになっているのはサブ・プライム・ローンの焦げ付きが大もとの原因なんですね。
多分、日本や他の国ではサブ・プライム・ローンなんて借り入れシステムは無かったんじゃないかと思いますが、これは高リスク高金利の住宅ローンなんです。
住宅ローンを組む時に、収入とか勤続年数とか職種とか家族構成とかいろいろ審査されますけど、その審査過程を通らない人たち(収入が低いとか勤続年数が短いとか、職種的に将来的な増収が見込めないとか)に、高金利で貸し付けるシステムなんですよ。
他の州の相場は判りませんが、特にカリフォルニアは一時の日本の住宅バブル並みに住宅価格が高騰していて、数年前まで2,000万円で買えたような中古住宅が一気に5,000・6,000万円に値上がりしてしまったので、下々庶民の収入では中古の小さな家さえ買えなくなってしまったんです。
そこで銀行や住宅ローン会社が、審査を通らないような高リスクの人たちに高金利で住宅ローンを科し付けはじめたんですね。それがサブ・プライム・ローンなんです。
ただでさえ普通のローン(プライム・ローン)の審査を通らないような、低収入や職種が安定していない人たちですから、プライム・ローン以上の金利のローンなんて払い続けられるはずはありません。
例えば、3,000万円の中古住宅を20年のプライム・ローン(普通ローン)で購入すると、月々の支払いが25万円ほどになります。
でも、このローンの審査を通らないような人たちが、高金利のサブ・プライム・ローンで借りると月々の支払いが30万近くなるんですね。
世帯月収50万円で30万円を住宅ローンに払うと、残り20万円で子供たちの養育費・食費・光熱費に自動車のローンやガソリン代、そして保険と固定資産税・・・・これはかなりやりくりが難しいです。
今回の大恐慌の元になったサブ・プライム・ローンで住宅を購入した人たちは僕なんかよりももっと収入が低くて不安定な人たちなんです。
25万円のローンが払えない人たちにとって、月々30万円の支払いはもっと払えないはずなんです。
これって経済に疎い僕でさえ判る、とても単純で『当たり前』の事のような気がするんですよ。
そこで銀行は、そういう人たちに対して『最初の5年間は月々の支払いが20万円』というような変動支払い額のシステムで貸し付けたんです。
最初の5年間の支払いを低くするとそのしわ寄せは残りの15年に来るわけで、支払額がドンと40万円近くなるわけです。
月々の支払い25万円のプライムローンに通らない人たちにお金を貸して、5年後に支払いが月々40万円になった時に返済が続けられるはずがありません。
(しかも、これに加えて固定資産税と住宅保険代がかかります)
これも、素人の僕から見てもとても『当たり前の話』だと思うんです。
新卒の弁護士さんやお医者さんの卵なら話は判ります。
今は審査を通らないような新米弁護士(医者)でも、5年後の収入はドンと跳ね上がる可能性が高いです。
それなら理が通ります。
5年後の大幅な収入増は完全に保証されているわけではないので確かに高リスクですが、職業的には多分取りっぱぐれる確率は低いかも知れません。
でも、銀行がサブ・プライムで貸し付けた人たちはそういう人たちじゃ無かったんですよ。
僕のお得意さんの家のハウス・キーパー(女中)さんは、3年前に家を買って月々の支払いが$3,000(約30万円)だと言っていました。
ご主人は警備員さんで、どちらも将来的に大きな増収があるとは思えません。
多分、3年前も今も、そして5年後も収入に大きな変化は無いでしょう。
子供3人の警備員さん(多分時給は1,000円程度)と通いの女中さんではプライム・ローンの審査が通るとは思えないので、頭金3%程度(あるいはゼロ)、支払額変動のサブ・プライム・ローンで住宅を購入したのだと思います。
銀行は金融のプロなんですから、借りた人たちは責められないような気もします。
全国の金融のプロ集団がこぞって、返済不能になる事が明らかな膨大な数の人たちに毎月何千万円ものお金を貸し続けた事が、僕にとっては『怪奇現象』なんですよ。
全国の銀行は返済不能になって抵当に押さえた住宅を転売して不動産業でも始めるつもりだったんでしょうかね?
これが、自動車のローンなら話は簡単です。
世帯収入40万円、可処分所得5千円程度の経済状態の人たちに「最初の一年は月々の支払い額8千円、2年目からは2万5千円」と800万円のレクサスを売りつけるでしょうか?
あこぎな銀行が2~3行そんな事をやって、増えた差し押さえ物件が売れなくて損失額がかさんで倒産したというのなら判ります。
サブ・プライムで貸した新米弁護士さんがいつまで経っても独立開業出来ずに2件ほど支払不能になった・・・というのなら良くある話でしょう・・・・。
でも、全国のプロ集団の銀行とそれに資本を出していたその上の金融機関が、素人の僕にでも判るような『当たり前の話』を破綻の時期が来るまでじっと待っていたというのが、僕にとってはUFOや霊なんかよりももっともっと怪奇現象に感じられて仕方ないんです。
