第82話 資本主義の不思議

ご存知のように僕は経済を専門的に研究しているわけでも、株の投資家でも、銀行勤めの経験があるわけでもありません。
だからこそ、素人の僕が見て『不思議』に思う事なんです。

僕の(多分、中学・高校程度の)経済知識では、資本主義は18世紀・19世紀の絶対君主制(王位や貴族階級など特定の地位階級が経済『も』支配する)に対して市民革命を発端に、民主主義とほぼ同時に(あるいは民主主義の一部として)発生したものと理解しています。

資本家が労働力を『買い』、有形無形のモノを生産して剰余価値(利益)を生む。
基本的にはそういう事だと理解しているのですが、『不思議』なのは最近(2008年末)の大恐慌と原油の高騰の直後の急暴落を見ていて感じる事なんです。
生産されたモノ(サービスであったり商品であったり)は、需要と供給の関係で『価値』が決まるはずだと(僕は)思っているのですが、実際には商品の価値は一旦カネという基準に置き換えられて測られるんですね。
そこまではまだ良いんですが、青果市場で人参1箱1,000円の値が付くのは、その年の人参の取れ高と人参を使って料理をする人たち(一般家庭や料理店、加工工場)の需要との原理で1,000円の値段が付くと思うんです。
ところがその人参を八百屋さんでも無く、青果仲買人でも無く、直接の消費者(主婦や料理店や加工工場の人)でも無い第三者がセリ落として、値上がりするのを待って転売する・・・・。
これって本当に資本主義なんでしょうかね?

資本家が(原材料などと同じようにコストとして)労働力を購入して、商品を『生産』し、市場原理の元に値が付く。
これが資本主義だとすれば、自分自身は必要が無いのに競り落として転売する人というのは何を生産しているのでしょう?
青果仲買は判ります。
小料理屋さんが人参ひと箱だけ欲しくても青果市場では1箱だけ売ってくれませんから、50箱買った仲買人が小料理屋さんや町の八百屋さんに1箱、2箱単位で卸売りする。
これは、ひと箱買った八百屋さんが消費者に一本ずつ売るのと同じ『サービス』というモノを生産(提供している)の思うんです。
ところが、原油の先物市場を見ていると、2ヵ月後渡しの原油が需要に直接関係無く高騰・暴落を繰り返しています。
確かに、需要の予想は原油価格に影響を与えているとは思いますが、2007年に1バレル$60だった原油の需要が2008年に$140を越えるほど需要が増えたでしょうか?
そして、金融恐慌の直後にまた$60に落ちるほど需要が下がった(あるいは供給量が倍増した)とは到底思えないのです。
そして、今も居るのかどうか不明ですが、地上げ屋というのは、モノを生産しているのではなくて『値段の操作』で利益を得ていたわけですよね。
『市場価格の操作』の目的は確かに利益なわけですが、それって資本主義における『生産後の剰余価値』と呼ばれるモノなのでしょうか?

これって、あまりにも大勢の人たちが(原材料などと同じく買われる『労働力』では無く)資本家になろうとした事から起きる弊害ではないかと僕は思うんです。
原材料などと同じく『買われる』立場の労働者階級では無く、資本家階級になろうとして資本投資する場を探し求めて株や先物取引や金や土地に資本参加する。
勿論、個人の事だけではなく大半が企業単位です。
しかも、その資本の投機が『資本参加して配当金から利益を得る』という『資本を提供してモノを生産する』という資本主義の原点ではなく、『(所有)権利を転売して利益を得る』という利益を目的として行われているように見受けられます。
これって、元来の資本主義の根底にある利益追求の形なのでしょうか?

市場価値自体が、商品そのものの需要と供給による価値ではなく、権利を所有している人たちの『権利の』売買の需要と供給で価値が評価される。
これは既に市場が商品価値を評価する本来の市場として機能しなくなっている現れのような気もするんです。

折りしも、日本で一世を風靡した音楽プロデューサーが詐欺容疑で逮捕されました。
彼は、音楽プロデューサー(Producer=生産者、製作者)であるにも関わらず、版権という『権利』を二重三重に転売・二重売買という詐欺を犯してしまいました。
有形無形の(商品やサービスや楽曲や作品など)モノを売って利益を得るよりも、そのモノの権利という生産から二次的に派生したモノの売買の方が主流になって来てしまった現われなのかも知れませんね。

早過ぎたレーニン、スターリンの社会主義国家も破局し、毛沢東が築いた共産国もいまや完全に針路変更して絶対主義に近い国家になってしまい、資本主義も単なる拝金主義(あるいは錬金術至上主義)に成り果て破局目前なのではないのでしょうか?
マルクスによると、資本主義は歴史的な一過性の経済社会で、資本主義が成熟した後に社会主義がやってくると説いています。
『資本家が労働力を『買い』剰余価値(利益)を第一優先として生産活動を行う』という資本主義社会において、誰もが剰余価値(利益)を手にしようとした時に、もうその構造は崩れ始めているような気もしてきます。
大統領選(2008年)で、マケイン陣営がオバマ候補(次期大統領決定)を「社会主義者」と批判・非難・中傷していました。
成熟し切って崩壊目前の資本主義の次に来るのが『本当の』社会主義だというマルクス論で言えば、資本主義経済崩壊のこの時期に社会主義者と呼ばれるオバマ氏が大統領になるのは、19世紀の哲学・経済学者の予想した通りの流れなのではないのでしょうか?

『資本家が労働力を購入し、資本家の利益の為に生産する』という現在の資本主義の次に来るのは
『資本を持っている人は資本を、労働力を持っている人は労働力を『同等に』提供し合って、市場が求めているモノを求めている量だけ生産する』という社会主義の第一ステップのような気がしているのはどうやら僕だけのように思えてしまうのは・・・・不思議な事なのか当たり前の事なのか・・・・・

次期大統領のオバマ氏が社会主義者?・・・・この成熟しきって腐臭がする資本主義なんかよりも僕は大歓迎です。

 

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